近年、3Dプリンターは業務用だけでなく家庭内でも使えるほどに低コスト化してきています。
本記事では、家庭用の3Dプリンターに限定し、どのような種類のものがあるか解説します。
また”作りたいもの”に応じたプリンターの選び方も合わせてまとめていますので、参考にしてみてくださいね。
- 家庭用3Dプリンターってどんなものがあるの?
- どんな3Dプリンターを選べばいいの?
- そもそも3Dプリンターってなんで立体物を作れるの?
3Dプリンターは何故立体物をプリントできるのか
3Dプリンターには様々な種類がありますが、何のない空間に立体物をプリントする原理は基本的にどれも同じです。
作りたい立体のデータを水平に薄くスライスし、スライスした1面ずつをプリントしたものを積み上げていきます。
当然スライスした面と面の間には段差ができますが、このスライスの間隔が非常に細かいため、滑らかな立体に見えるという訳です。
家庭用3Dプリンターは次に紹介する「熱溶解積層方式」と「光造形方式」の2種類がありますが、どちらも「薄いスライス面を積み上げる」という仕組みにおいて同じと言えます。
熱溶解積層方式
概要
Fused Deposition Modelingの略でFDM、またはFused Filament Fabricationの略でFFFと呼ばれることもあります。
どちらも同じ技術で作られていますが、ある3Dプリンター会社が先んじてFDMの名称を商標登録したことで、制約を避けるためにFFFという言葉が産まれました。このエピソードの詳細はここでは省略しますが、本サイトでは言いやすいFDMで呼称していきます。
造形物を薄く水平にスライスしたデータの通りに、プラスチックを熱で溶かしてプリントします。プラスチックで薄くプリントしたスライス面を下から上に積み上げ、立体を作っていくという訳です。
また材料のプラスチックはフィラメントと呼ばれる細いワイヤーの形の形をしていて、色々な種類・色の材料を使うことができます。
細いフィラメントをスライス面に塗り広げていくため、他の方式に比べて造形時間が長くなる傾向があります。
メリット
FDMには以下のメリットがあります。
プリンター自体が安価
多くの企業が参入していることもあり、プリンターの値段も安くなってきています。Amazonでも気軽に購入することができ、3万円を切るものも。
筆者もFDMで作成したオブジェなどを販売していますが、プライムデーセールで2万円で購入した激安プリンターでも十分な精度のものが造形できていますよ。
フィラメントの種類が多い
フィラメントの種類はPLA(ポリ乳酸)と呼ばれるものが一般的ですが、PC(ポリカーボネート)やTPU(熱可塑性ポリウレタン)などの異なる種類のプラスチックも使用することができます。
PCではバネのような弾性を持たせたものを造形することができ、TPUではブヨブヨとした柔らかいものを造形できます。
造形できるものの幅の広さが魅力と言えるでしょう。
フィラメントが安い
材料は一般的なPLAであれば非常に安く、家庭用フィラメントであれば1kgあたり3,000円弱でAmazonで購入することができます。
造形する量や大きさにもよりますが、1kgあれば小物はなかなか使いきれないくらい保ちます。
デメリット
スライスとスライスの間の凹凸が目立ちやすい
プラスチックを溶かして乗せていくので、スライス間に段差ができます。この凹凸は積層痕と呼ばれ、FDMで造形する場合には避けて通ることができないものになります。
スライスの間隔(ピッチと言います)を細かくすることで滑らかにしていくことはできますが、その分造形する層が増えるので造形時間も増えます。
造形時間がかかる
安価な家庭用3Dプリンターで比較すると、光造形に比べて造形時間がかかることが多いです。
具体的な時間で言えば、筆者の使っている激安FDMでは高さ10cmほどのオブジェを作るのに5時間ほどかかります。
光造形方式
概要
日本では一概にFDMとは違い、日本ではそのまま「光造形」と呼ばれることの多い方式です。
造形物を薄く水平にスライスしたデータを、紫外線を照射すると硬化するレジンを使ってプリントします。スライス毎に硬化させる工程を繰り返し、立体をプリントしていきます。
なお、ここで使われるレジンは、ハンドメイドでよく使われるUV硬化レジンと同じ原理です。
立体物をスライスして1層ずつプリントしていくのはFDMと同じですが、1面の硬化が同時に行えるタイプもあり、FDMより速く造形できる傾向にあります。
メリット
造形制度が高い
同じスライス間隔(ピッチ)のFDMと比較して、積層痕が目立ちにくいという大きなメリットがあります。
細かいディテール再現に優れているため、複雑な形の細かいものを作る場合はFDMより光造形の方が向いていると言えるでしょう。
造形速度が速い
家庭用の光造形方式は液晶ディスプレイでスライス面を一斉にUV照射する仕組みが多いため、FDMなどと比べても造形時間が短く済むことが多いです。
デメリット
サポート材の跡が残りやすい
FDMも光造形も、3Dプリントを成功させるためにサポート材を使って造形することが多いです。サポート材は造形物そのものではなく、3Dプリント後に造形物から剥がして捨てるものです。
このとき光造形はサポート材の固定跡がぶつぶつと表面に残りやすく、きれいにするためにはやすりがけなどのアフター処理が必要になります。
レジンの後処理工程が手間
使用しなかった残りのレジンは、液体ですがそのまま下水に捨てることはできません。特殊な薬品になりますので、市区町村のゴミ捨てルールに従って捨てる必要があります。
FDMは普通に可燃ごみで捨てられることが多いので、考え方によっては大きなデメリットと言えるかもしれません。
レジンが高い
家庭用でも、1Lで1,2万円します。1kg3,000円程度のFDMのフィラメントと比べると、継続使用コストは大幅に高くなるという問題があります。
造形物が頑丈ではない
造形物は耐候性の点で弱いという弱点があります。太陽光(紫外線)に当たり続けるとさらに硬化が進んでしまい、、変形や割れが生じることも。
またレジンは硬化しても強度が出ないため、ぶつけて割れてしまうこともあるので気をつけましょう。
比較
目的別おすすめプリンター
目的や扱い方のスタンス別に、向いているプリンターをまとめてみました。ご自身の用途に合わせて選んでみてくださいね。
目的 | FDM | 光造形 |
---|---|---|
フィギュアなど細かいものを作りたい | △ | ○ |
強度がいる実用的なものを作りたい | ○ | △ |
安く気楽に作りたい | ○ | △ |
早くたくさん作りたい | △ | ○ |
いろんな色の材料を使いたい | ○ | △ |
まとめ
3Dプリンターで作りたいものは決まってないけど、とりあえずものづくりしたい!という人はFDM(熱溶解積層方式)が圧倒的におすすめです。
プリンターそのものも安く、メンテナンス維持や最悪使わなくなった時の処理が非常に楽なのが理由です。
買ってみれば面白くてきっとハマりますよ!一緒に3Dプリンター生活を楽しみましょう!