業務用3Dプリンター

粉末焼結積層方式について解説 家庭用ってあるの?

粉末焼結積層方式の3Dプリンターは、機種によっては金属もプリントすることができる夢のようなプリンターです。
基本的には業務用で安くても1,000万円以上するのが少し前までは当たり前だったようですが、家庭でも使える時代が来れば……と夢のようなことを考えてしまう筆者です。

この記事では、粉末焼結積層方式(SLS方式)の仕組みについて解説します。また家庭用は実現の可能性はあるのか。さらに現在はどの機種が最も家庭用に近いのかついてご紹介します。

この記事でわかること
  • 粉末焼結積層方式(SLS方式)の3Dプリンターってどんなもの?
  • SLS方式のプリンターは家庭用はあるの?

粉末焼結積層方式のプリンターとは

概要

粉末焼結積層方式(SLS: Selective Laser Sintering)は、材料に非常に細かい粉末を利用した3Dプリンターです。敷き詰めた粉末材料に1層ずつレーザーを照射して熱で焼結(溶かして硬化)させ、それを繰り返して立体物をプリントします。

2014年に特許が切れて以来、各社からSLS方式を使った商品開発が進められています。それにより開発競争が起き、低価格化もずいぶん進んできているという現状です。

使える材料

ナイロンの樹脂粉末を使ったものが一般的です。また高価な機種になりますが、金属を細かく粉末にすることで、金属をそのまま造形できるタイプもあります。

メリット

サポート材が不要

硬化させていない箇所にはそのまま粉末が残るため、サポート材を余計に造形する必要がありません。サポート材が必要な方式の3Dプリンターと比べ、サポート材にかかるコストを無視できるのは大きな利点と言えるでしょう。

造形物はとても頑丈

他の方式の3Dプリンターと比べて、造形物の強度が高いのが特徴です。積層間の材料がレーザーによる高温で溶融していること、また材料の強度も高いことが理由です。
この強度の高さにより、造形物をそのまま商品として納品することも可能でしょう。

デメリット

造形後の後処理が面倒くさい

造形した部品の内部や周りには硬化しなかった材料の粉末がびっしりとくっついています。未硬化の粉末の除去や再利用可能な粉末の分別・リサイクルといった作業が必須で、この工程がSLSの導入コストを押し上げている一つの要因とも言えるでしょう。

また粉末という特性上、空気中に舞う、プリンター周りが粉だらけになるという問題もあります。

造形物の表面に凹凸

材料の元が粉末のため、造形物の表面は粉末由来のぶつぶつとした凹凸が見られます。表面を消すには、ヤスリをかけるなどの後処理が必要になります。

家庭用ってあるの?

本ブログでは、家庭用3Dプリンターの普及に関して特に着目しています。その一番重要なところ、家庭用はあるのかという視点で解説します。

残念ながらしばらくは難しそう

いきなり残念な結論ですが、家庭用のSLS方式3Dプリンターは10年やそこらでは出てこないと考えられます。
一番の理由はその導入コストの高さです。

  • どんなに安い機種でも500万円程度はかかる
  • 防塵・防爆対策が必要で、取り付けに工事が必要なケースがある
  • 粉末の後処理などのメンテナンスコストが高い

いくつか考えただけでも、これだけの問題が挙げられます。
たくさんの粉末がある以上、空気中に舞って家の中が粉だらけになるのが容易に想像できますよね。

SLS方式は金属をプリントできたり高強度のものを作れるので、筆者もぜひ家庭用に欲しい性能です。それだけに現状は残念ですが、これからの技術の進歩に期待してそれまではFDMや光造形を楽しむことにしましょう。

今、一番家庭用に近い機種

ただ家庭用と呼べるレベルのものはまだないとはいえ、当然最もそれに近い(と言えなくもない)業務用の機種はあります。
Formlabsから出ているFuse1+は、家庭用に最も近いと言える3Dプリンターです。

ただしこれでもプリンター重量は120[kg]、最低でも倉庫や工房などの設備がないとおいそれと導入はできませんね。当然値段も気軽にとは言えず、まだまだビジネス用途の3Dプリンターです。

まとめ

粉末焼結積層方式(SLS方式)の3Dプリンターは、金属すらも高精度に出力できる夢のプリンターです。ナイロンを使ったプリントでも高強度の造形が期待でき、最も質の高い造形ができる3Dプリンターの一種と言えます。

しかし粉末を使う仕組み上、メンテナンス的にもコスト的にも家庭用3Dプリンターが出てくるにはまだまだ時間がかかります。
それでも価格という意味ならばどんどん導入障壁が下がってきているのも事実です。倉庫や工房を持っている方なら、(家庭用とは言えないかもしれませんが、)簡単に導入できる時代は案外もうすぐかもしれませんね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
SLSを気軽に利用できる時代はまだかかるので、FDMや光造形でものづくり生活を楽しみましょう!